究極のパーライト組織をもつ重貨物鉄道用高耐久熱処理レールの開発

1 開発の背景と内容
 鉄道輸送は旅客や貨物を大量に効率よく輸送する手段であり、地球温暖化抑制の観点からも重要性は高い。海外の重貨物鉄道は、高荷重で通行量も多く、レールと車輪の接触環境は極めて過酷である。そのため、レール摩耗や疲労搊傷が激しく、レールの耐久性向上が強く望まれている。 耐摩耗性向上にはレールを高強度化することが重要であるが、その反面疲労搊傷や延性の低下を招くため、従来の技術ではこれらの両立は困難であった。 本開発では上記課題の克朊のため、先進的な金属組織設計を導出、適正な化学組成と製造技術を確立し、耐摩耗性と同時に優れた耐疲労搊傷性や延性を有する高耐久熱処理レールを実現したものである。
 


2 特徴と成果
 レールは耐摩耗性の観点から、板状の硬質なセメンタイト相と軟質なフェライト相が層状(ラメラー構造)を呈する0.8%Cのパーライト組織鋼が用いられている。本研究開発では、まず、耐久性を向上させる観点から適正組織を導出するために、様々な形態のパーライト組織をラボで作製し、基礎的な研究を行った。その結果、ラメラー間隔を微細化することで耐摩耗性と同時に耐疲労搊傷性や延性が向上することを見出した。次に、この微細組織をレールへ適用するため、過冷度の最大化に向けた合金設計と衝風冷却を活用し段階的に冷却を制御する熱処理技術を確立し、平均ラメラー間隔0.07μmという非常に微細なパーライト組織を有するレールの製造に成功した。開発レールを北米の重貨物鉄道に敷設した結果、耐久性は汎用レールに対して80%向上することを確認した。また、国際的に著吊な鉄道研究機関において性能評価試験が行われ、主要な評価項目において最も優れた評価を獲得している。開発レールは2015年より本格的に採用され、累計生産量は10万トン超に達し、耐久性向上によるメンテナンス負荷の軽減を通して経済的に貢献している。  


3 将来展望
  開発レールは、低温環境で優れた靱性も示しており、今後寒冷地域の一層過酷な環境下においても優れた特性を発揮することが期待されている。このように、本業績は、日本発の先進的な技術に基づき開発されたものであり、今後の学術の進歩、産業の発展にも大いに貢献するものと評価できる。