液晶ディスプレイ用の位相差フィルムの生産技術開発

1 開発の背景と内容
 TVがブラウン管から液晶に移行し始める2000年前後、液晶ディスプレイ(LCD)用光学フィルムは溶剤塗布・乾燥工程を要する溶液キャスト法でのみ製造が可能とされ、製造コスト高が普及の大きな障害となっていた。本業績は、高透明性、低複屈折性、低吸湿性等の特長を有するシクロオレフィンポリマーを用いて、上可能とされた溶融押出し法による光学フィルム成形において、溶融キャスト法を凌ぐ品質を世界で初めて実現した。この光学フィルムを原反として、業界初の広幅逐次2軸延伸技術によるLCD用視野角拡大位相差フィルム、世界初となる斜め延伸技術による円偏光板用斜め延伸位相差フィルムの製造技術を開発し、生産技術として完成させた。これにより、高品質で低価格な光学フィルム、LCD産業に必須の位相差フィルムを市場に提供し、大型液晶TV等のLCD産業の発展に大きく貢献した。
 


2 特徴と成果
 本業績では、まず溶融押出し法でのTダイ・ロール間エアギャップ部分の雰囲気温度や気流の制御により、溶融キャスト法(厚みムラ±2%)を凌ぐ±1%以下の制御を実現し、携帯電話用位相差フィルム市場シェア80%以上(2003年時点)を達成した。逐次2軸延伸技術では1350㎜幅方向の膜厚上均一を、テンター内での幅方向温度分布の最適化により改善し、また分子配向角の上均一(ボーイング現象)を、流れ方向の張力制御機構により抑制した。これにより、液晶パネル偏光板と同幅の幅広位相差フィルムとのロールto ロール連続貼り合わせが可能となり、偏光板の薄肉化と大幅な低コスト化が実現された。現在、VA型液晶TVの位相差フィルムでは大型ディスプレイ市場の40%以上を占有し業界をリードしている。さらに、斜め延伸技術では、溶融押出し原反フィルムの幅方向光学特性に、延伸後と逆の傾斜を予め持たせることで斜め延伸後の均一化を実現した。任意の配向角θに対応できる世界唯一の位相差フィルム生産技術として市場を占有している。現在、1億2千万㎡/年の位相差フィルムを世界に供給し、LCD産業界の発展を支えている。  


3 将来展望
  2002年に上市した溶融押出し法による高品質光学フィルムの製造技術は、2004年に逐次2軸延伸技術を、2007年には世界に類を見ない斜め延伸技術を生み出し世界をリードしてきた。世界のLCD市場規模はなお拡大しつつある。LCDの大型化に対応してフィルム幅も2300㎜へとさらなる幅広化が、また厚さ精度も±0.5%以下へと、国内外で他の追随を許さない技術革新が進められている。斜め延伸フィルムは、円偏光VA型ディスプレイから、スマートフォン、タブレットのタッチパネルに適用が広がり、ディスプレイ産業の発展に今後ますます貢献するものと期待される。