環境負荷低減型超ハイテン橋梁ケーブル用ワイヤ向け線材の開発

1 開発の背景と内容
 橋梁用ワイヤの分野において、安全性の確保、建設費の削減、社会インフラ整備の促進のため、その高強度化が必要上可欠な研究課題であった。一方、高強度なワイヤは、これまで、鉛浴熱処理(LP)と伸線加工技術を組み合わせることで製造されてきたが、この手法は処理能力が低い上、鉛を使用する点から国によっては環境の規制対象とされてきた。そこで、低環境負荷かつ大量生産可能な高強度線材の製造が喫緊の課題として取り上げられていた。本成果は、高強度、低環境負荷、大量生産の三つの課題を、新日鐵住金㈱が新たに開発したインライン熱処理技術によって克朊したものである。
 


2 特徴と成果
 新日鐵住金㈱ではいち早く、高強度、低環境負荷、大量生産の三つの問題に取り組み、鉛を用いないインライン熱処理(DLP)を高度に制御し、低環境負荷(鉛フリー)でかつ大量生産可能なプロセスを実現した。同社は、①線材圧延時の巻取温度制御および冷却温度制御による組織の均質化、②高炭素高Si鋼へのB添加によるベイナイト組織の抑制、③DLPを適用した大量生産技術の確立などを着実に進め、鉛フリーの塩浴で従来の30倊の大量生産を実現している。DLPを用いた新しいワイヤ製造工程を従来法と比較するとその差は顕著である。また、ベイナイト組織の抑制には粒界フェライト抑制が関係していること、ボロン添加の役割の解明など工学的にも重要な問題についても明らかにしていることは意義深い。  


3 将来展望
  熱処理による組織制御、ワイヤの高強度化について系統的な実験を長年積み上げ、精密な組織制御、ベイナイト組織の生成メカニズムと抑制法の考案、微細パーライトの作りこみなど、工学的にも極めて重要な点を明らかにし、本技術開発に取り組んできたことは、産業的・社会的波及効果も大きく、その先見性と独創性において高く評価できる。本開発技術を応用することで、従来の強度を超えるワイヤ製造を世界各地で可能にするとともに、将来的には長大橋建設の継続的な発展が大いに期待できる。