EV/PHV向け直接水冷型両面冷却パワーモジュールによる
小型高出力インバータの開発

1 開発の背景と内容
 カーボンニュートラル社会の実現に向けて、電気電動車(EV)の普及が加速している。このEV普及には、充電に関わる上安を低減し、航続距離や走行性能の向上が求められている。その実現には、冷却性能に優れ充電時間の短縮に役立つ小型高出力で高電圧な駆動システムが必要であった。日立は、鍵となる直接水冷型両面冷却パワーモジュールによる小型出力インバータ技術を開発した。これは、日立の長年に渡る広範な技術蓄積に加え、関係者の独自コンセプト、セレンディピティによるもので、2005年頃から開発、試作、2011年には、顧客からも高い評価を受けている。本技術は世界で初となる800V対応、世界トップの出力パワー密度94.3kVA/Lを達成、航続距離拡大や走行性能向上を可能にした。
 


2 特徴と成果
 世界に先駆けて考案された直接水冷型両面冷却技術の実現には、浸漬用フィン付きアルミケースの長期防水性と残留引張応力による剥離が課題であった。この課題に対し日立は、封止材とフィン付きアルミケースとの強靭な接着処理と2段押し熱圧着による高密着化技術を開発し可能にした。高耐圧化では、薄い絶縁層内のボイドで生じるコロナ放電の抑制に向け、積層した絶縁層の中間に良導体の銅薄膜を設けることでボイド周辺の印可電圧を安定に分圧、膜厚1/2でも高い絶縁性を実現した。加えて、これまで培ってきた摩擦攪拌接合技術やトランスファーモールド技術、熱圧着技術を駆使して可能になった。 本開発技術搭載のインバータは、2014年から実用化を始め、2019年にEV向け800V対応品の量産を開始、すでに30万台を超えるEVやPHV(プラグインハイブリッド車)に搭載されている。  


3 将来展望
  対象となる直接水冷型両面冷却技術は技術難度が高く、冷却性能などのベンチマークに優れ、今後開発が進むSiC(Silicon Carbide)などの高速パワーデバイスが主流になっても、低インダクタンス性能などの優れた特長により優位性は維持され、今後主流になると見込まれる。すでに欧州、北米、中国、国内など世界中の数多くの自動車メーカーに採用されており、EVの普及を促進すると共に、データーセンタや航空機等省スペースで軽量化が必要な分野にも展開を進め、カーボンニュートラル社会の早期実現に貢献するものである。